こんにちは、SKIコーポレーションの中村徳裕です。
日差しが一段と強まり、本格的な夏の訪れを感じる季節となりましたが、
皆様いかがお過ごしでしょうか。
先週の土曜日、私は妻と一緒に、博多駅の阪急百貨店で開催されていた
「旅するCreFes」というイベントへ足を運びました。
全国から12名の素晴らしいつくり手たちが集まる中、
私たちの足を釘付けにした、ひとりの素敵な女性との出会いがありました。
岩手県から出展されていた、「手製本ノート すずめや」の
四方佳奈(よも かな)さんです。
彼女が生み出す「手製本ノート」の世界に触れた瞬間、
私は印刷・製本に携わる人間として、激しい衝撃と深い感動を覚えました。
今回のテーマは、万力と「焼き鳥の串」から生まれる奇跡のノート!
ぜひ、お読みください。
(‘◇’)ゞ
◆ 衝撃の職人技!ベニヤ板、万力、そして「焼き鳥の串」!?
皆様は「上製本(じょうせいほん)」という言葉をご存知でしょうか。
ハードカバーの立派な本のことで、通常は工場にある大きな断裁機や、
大きな圧力をかけるプレス機も使って作られます。
ところが四方さんは、そんな大型機械を一切使わず、
すべて自宅のアトリエで、手作業で本を仕立て上げているのです。
「どうやってプレスしているんですか?」と尋ねると、
返ってきたのは「ベニヤ板と万力(まんりき)です」という驚きの答えでした。
さらに、ハードカバーの背にある美しい「溝(みぞ)」の型をつけるために、
なんと「焼き鳥の竹串」を挟んで万力でガチッと締め、
接着して固めているというのです!
独学で始めたという四方さんが、お金も時間もなかった若い頃に
「どうしても本を作りたい!」という一心で生み出した、
手探りのオリジナル技法。
この圧倒的な工夫と執念には、プロの端くれとして
ただただ脱帽するしかありませんでした。
◆ 印刷物じゃない!一冊一冊が世界に一つの「絵画作品」
すずめやさんのノートの魅力は、製本技術だけにとどまりません。
なんと、「表紙の模様」が印刷ではなく、
すべて四方さんが手描きした「絵」なのです。
質感の良い高級紙「タント」をベースに、
彼女の感性で美しい色彩が載せられた表紙は、
もはやノートというよりも一つのアート作品。
一冊として同じものは存在しません。
さらに驚くべきことに、そのノートたちには
「あの子のちいさなゆびわ」(ピンク系の作品)
「またたく星の」(黒っぽい作品)といった、
ロマンチックで可愛いタイトルが一つずつ名付けられているのです。
タイトルをつけることも、彼女にとって大切な作品の一部なのだと言います。
本文用紙には、北越製紙の「サンレイド」というこだわりの紙が使われており、
万年筆のインクでも裏抜けしない上質な書き味が特徴です。
妻と二人で「これもいい、こっちも素敵だ」と宝探しのように迷いながら、
最高の相棒を選び出す時間は本当に幸せなひとときでした。
◆ デジタル全盛だからこそ、私たちは「対極」の温もりを求める
四方さんは愛知県出身で、
大学時代を過ごした京都で18年前にこの活動を始め、
5年ほど前に宮沢賢治のふるさとである
岩手県雫石(しずくいし)へと移住されたそうです。
30畳の広々としたアトリエの横には畑もあり、
なんと「堆肥の配合比率」をAIに相談しながら野菜を作っているという、
チャーミングな一面も教えてくれました。
「AI時代とはあまり縁がないです」と笑う四方さんですが、
この手仕事こそ、AIには絶対に変えられない人間の感性の極みです。
実は、我がSKIコーポレーションでも、時代の対極を行くような、
あえて生産性の高くなさそうな
「リソグラフ(孔版印刷)」を使った表現に挑戦しようとしています。
また、近所の製本工場が閉められる際、
愛おしい機械たちをすべて譲り受けて工場に並べたりしています。
デジタルやAIが便利になればなるほど、
人間はそれとは真逆にある「人の手の温もり」や「不揃いの美しさ」を
本能的に求めるようになるものだと感じています。
四方さんのノートを見つめながら、その確信はさらに強まりました。
◆ 結びに:選ぶセンス、そして続ける価値
このメルマガも、おかげさまで15年間、毎週欠かさず書き続けています。
今では約2,700人の読者の皆様へお届けし、
毎週500人以上の方が開封して読んでくださっています。
四方さんの「好きだから、手探りでも18年続けてきた」という言葉は、
毎週言葉を紡ぎ、モノづくりを続けている私の胸にも深く突き刺さりました。
世の中に大量生産のノートは溢れていますが、
誰がどんな想いで作ったかという「物語」があるモノを選ぶことは、
人生を豊かにするセンスだと思います。
皆様もぜひ、すずめやさんの美しい手仕事の世界を覗いてみてください。
デジタルな毎日に、一冊の「手作りの本」がきっと優しい風を運んでくれます。
本日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。
SKIコーポレーション 中村徳裕
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