こんにちは、中村徳裕です。
今回、私が「東京アートブックフェア」に行こうと思ったきっかけは、
実は、とてもシンプルな会話でした。
相手は、私より20歳若い、
エスケイ・アイ・コーポレーションの代表取締役社長、川上亮です。
ある日、彼から
「最近、“ジン”っていう本のムーブメントがすごいんですよ」
という話を聞きました。
正直に言うと、
最初は
「ジン?……飲み物?」
と思いました(笑)。
でも、そうではなくて、
マガジンの“ZINE(ジン)”。
出版社を通さず、
もっと自由に、もっと個人的に、
自分で本を作ってしまい、
そのまま発表してしまう。
そんな“自由な本づくり”が、
今、世界的なムーブメントになっている、
という話だったんです。
そして川上社長が、こう続けました。
「それが、見ただけでわかるレベルの
すごいイベントが、東京でありますよ。
僕も行くつもりです」
それを聞いた瞬間、私は思いました。
百聞は一見にしかず。これは自分の目で見ておきたい。
そう思って、
「よし、俺も行くぞ」と決めたのが、
「東京アートブックフェア」でした。
先週の金曜日、
東京現代美術館で開催された
東京アートブックフェア。
朝から夕方まで、
足が棒になるまで歩き回った、
これはその見聞録です。
◆「本は、やっぱり残るものだ」と確信した話。
東京アートブックフェアの会場に足を踏み入れた瞬間、
まず頭に浮かんだのは、
今、私たちが日常的に触れている
デジタルの情報の流れのことでした。
インスタグラムをはじめ、デジタルの世界では、
新しい情報が次々と現れては、
あっという間に通り過ぎていきます。
検索すれば、あとから探すことはできる。
でも基本的には、流れていく。
それが、デジタルの特性だと思っています。
一方で、
物理的な「本」という形に残されたものは、
そこに存在し続ける。
人々の表現や記録、思い出、歴史。
企業が積み上げてきた時間。
個人が長い時間をかけて温めてきた考え。
それらが、
一生懸命に思いを込めて作られ、
作品として、アナログな形で残り、
人から人へと伝わっていく。
それが「本」なのだと、
この会場に立って、あらためて感じました。
もちろん、デジタルを否定するつもりはありません。
情報を広く、早く伝える手段として、
これからもデジタルは主役であり続けるでしょう。
ただ、
記録として残すこと、
残り続けるものをつくること。
その役割は、
やはりアナログの「本」が担っている。
僕は、東京アートブックフェアの会場でそう確信しました。
◆世界中の「本に魂を込める人たち」と、そのファン
東京アートブックフェアには、
日本からの出展はもちろん、
デンマーク、フランス、ドイツ、アメリカ、韓国、インドなど、
世界中から本づくりに魂を込めた人たちが集まっていました。
そして私が最初に驚いたのは、
出展の数や国籍の豊富さ以上に、
それを求めて集まる「読者としてのファン」が、
想像以上に多かったことです。
この会場には、
「本を買いに来た人」ではなく、
「この本に出会いたい人」が集まっていました。
◆その場で決断しないと、もう出会えない本たち
会場に並ぶ本の多くは、
ここで出会い、
その場で決断しないと、
もう二度と出会えないかもしれない。
そんな緊張感をまとっていました。
価格は、
ただ、
手作りの本の多くは、
3000円、5000円、8000円、
中には1万円を超えるものも、
決して珍しくありませんでした。
それでもファンの人たちは、
その価値を当然のように理解し、
迷いながらも、
しっかりと決断して本を手に取っていく。
その姿に、
私は強い衝撃と、
同時に希望を感じました。
◆本づくりは、こんなにも自由でいい
会場にあった本は、
本当に多様でした。
お金をかけた、
完成度の高い装丁の本もあれば、
手作り感をあえて残した本もある。
リソグラフや特色インクを使った、
大胆な色表現。
糸綴じや金綴じなど、
製本そのものを表現にした本。
正解はひとつもなく、
すべてが「表現」になっている。
その自由さが、
とても心地よく、
同時に刺激的でした。
◆ジンという文化が、確かに芽吹いている
今、
「ジン」という本の形が、
多くの作り手の魂を刺激しています。
出版社を通した流通とは違う、
個人が手作りで作る本。
それは、
デジタルの流れていく情報の文化の中で、
あえて残すための、
アナログな本として、
確かに人々の中に根を張り始めている。
そんな感覚を、
この東京アートブックフェアで強く持ちました。
◆これからの本づくり、印刷の仕事
今回の東京アートブックフェアで、
私はあらためて思いました。
本づくりも、印刷も、
まだまだ可能性に満ちている。
これからも私は、
チームとして、
お客様の思いや歴史を残していく本づくりを、
プロフェッショナルな書籍から、
ジンの制作まで。
私たちが培ってきた
アイデア、技術、歴史、伝統をもって、
丁寧に、誠実に、
お手伝いしていきたいと思っています。
今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。











