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大島造船所で聞いた特別なお話

先日、所属している団体の60周年記念特別例会ということで、
あこがれのオリーブベイホテルに宿泊する機会がありました。

オリーブベイホテルは、
大島造船所のグループ企業ということもあって、
株式会社大島造船所と大島酒造株式会社の
見学バスツアーも楽しませていただきました。

造船所に入ってすぐ目に留まったのが、
巨大なクレーンの横幅目一杯使って書かれた
「明るい大島 強い大島 面白い大島」
というキャッチフレーズ!!

パワフルなキャッチフレーズと同様、
案内役の方の言葉も、
非常に力強い言葉でした。

なんと25年度の経常利益が300億!!
売上が1500億ということですから、
なんと売上高経常利益率が20%!!

工場内を移動していると、
巨大な船舶の部品が
きちんと決められた場所に、
並行直角に整然と並べて置かれています。

こんなに巨大な鉄の部品や、
それを移動させる特殊車両や、
いろいろな仕事の道具が、
とにかくキレイに並べて整理整頓してあるのです。

うーん、
やはり儲かっている工場は、
整理整頓清掃(3S)の行き届き方が桁違いでした!!

しかしなぜ、こんなに利益率が高いのでしょうか!!

そのストーリーも聞くことができました。

なんといっても
平成3年に「バルクに特化」という大方針を掲げたこと。

・・・といわれても「バルク」って何?と思いましたが・・・

「バルク船」とは「バラ積み貨物船」の事。

実はそれが、世界の商船の40%を占めているそうです。

・・・ということで、
得意な船型である「バルク船」に、
特化集中して受注建造するということでした。

豪華客船の建造や、艦船の修理などは行わず、
ひたすら「バルク船」の、
しかも「新造船」を受注建造することに特化集中。

なんと、自社で建造したバルク船の修理も、
「修理は他の造船所に依頼してもらう!」
というほどの徹底ぶりです。

他の造船所からは、それしかやらないのは一流ではないなどと、
陰口をたたかれたこともあったと、
見学の際に説明されたことも印象に残っています。

しかし、一つの船型に集中することによるメリットは計り知れません。

私達の業界の言葉で言えば、
まるで、「再版」

同じ「設計図」のバルク船を、
次ぎ次に受注して建造するスタイルは、
まるで、一度印刷した出版物を、
すでにある「版(データ)」を使って
追加印刷するようなもの。

コスト競争力が、根本的に高くなるのは、
考えてみれば分かります。

その上、特化して、繰り返し建造していきますから、
ノウハウが蓄積され、
コストダウンの努力もさらに積み重なって行きます。

それを続けていくうちに、
目指していた「特色ある世界的造船所」、
「小さな世界企業」になっていったのです。

しかし、このバルク船への特化集中は
そう簡単に実現されたものではありません。
そこには波乱万丈のストーリーがありました。

この話を詳しく読める
「大島造船所30年史」
(平成14年ころ発行された本)
が公式ホームページに掲載されています。
http://www.osy.co.jp/company/30history.php

絵本のような形式で、
まるで、ドキュメント番組を見ているように面白く
一気に読んでしまいました。

その中を掻い摘んで紹介すると・・・

昭和46年に、大阪造船所2代目社長の一行が、
炭鉱閉山後の大島を視察。
その年にニクソンショックが起こり1ドル360円の固定相場が終了!
翌47年には大島に進出することが決定し、
48年に創業するも、円高による荒波、
さらには第一次オイルショックも起こり、前途多難な船出に。

苦労に苦労を重ねて、危機を乗り越えていく様子が、
ドラマチックに描かれています。

平成5年に始まった長崎大島トライアスロン大会の立ち上げ。
平成6年にはいち早くITを念頭に情報システムの構築。
平成10年から13年の、円高と韓国造船業の激安に対抗する、
徹底したコストダウン。
平成13年には、ノルウェー国王から
「クリーンで活気あふれるパーフェクトな造船所」と言われたこと。
同じ13年に、黒字が続いたことによる組織の緊張感の緩みを改めるべく、
「腹蔵なき議論」を経ての「全社一丸」の再構築。

など、読み応え十分なお勧めの30年史でした。

是非、続編を追加した40年史を
読ませていただきたいと感じております。

最後に、
30年史を読んで特に印象に残ったのは、
パスカルにあやかった大島造船所の「合言葉」、
フランス語の「PENSEE(パンセ)」

合言葉「パンセ」とは「四考」(シコウ)の事で、
次の四つの言葉を表します。
志を高く(志高)、
自分の頭で思い考え(思考)、
それを実践で試し(試行)、
そして高所・理想に至る(至高)こと。

シルバーウイークに、よい読書の時間を持てました。

志を高くして、
しっかりと自分の頭で考え、
それを実践で試してみて、至高を目指したいと
想いを新たにしました。

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