

還暦を迎える朝、
妻と共に新たなる挑戦の旅にでる。
筆一本と己の力だけが頼りの
全国無銭行脚「書魂」の旅。
出会った街・自然・人との感動の日々、
70日間の記録…。
これは、23年前に出版された中島光晴氏の「書魂」の帯に記された文章です。
中島光晴先生夫妻と出会い、
僕と妻も、書籍「書魂」の出版を通して、
氏のドラマチックな体験を共有しました。
今回のテーマは、
「本で勢いづいた」と言われる幸せ~日本一周70日間感動の旅~
僕と妻は、今から23年前の日曜日、
当時創刊2年目の「月刊ならでわ!」を手に、
配布先や、取材先などを探しつつ、伊万里川の川沿いをドライブしていました。
そこで、素敵な雰囲気のお店「伊豫屋(いよや)」を発見。
川沿いの階段を上って2階に上がると、
「和」の様々な素材に、「創作の書」に魂をこめた作品が並んでいます。
そこで出会ったのが中島光晴先生と、その奥様 榮子さん。
お話を聞くと、お二人は還暦を期に、
「創作の書」を武器に、なんと全国無銭行脚の旅に出て、
帰って来られたばかりという、ホットなタイミングだったのです。
中島光晴先生と奥様に、全国行脚のお話を伺い、
写真を見せていただきながら盛り上がっていくうちに、
中島光晴先生のお話を、聞き書きで妻のまり子が書き起こしていく…
というスタイルで、書籍「書魂」を出版する
ということになったのです。
それから、毎週のように、妻と私は伊万里に通うことになりました。
伊豫屋の閉店時間を目指して訪問し、
伊豫屋のカウンターで中島先生の話を聞きながら、
旅の一つのストーリーを、本のひと見開きに編集していきました。
旅の記録の前の章は、作品集にしました。
中島光晴先生の作品を、楠本端山旧宅や伊万里の川沿いや大川内山に持ち出し、
写真家 植木義孝氏が撮影。
趣ある風景と氏の作品がお互いに引き立て合って、迫力あるページになっています。
僕は、この自信作「書魂」を抱えて、全国に芸文堂の本を卸していただいている東京新宿の「地方・小出版流通センター」に出向き、
社長の川上様を訪ねました。
そこで精一杯の熱意をぶつけながら、この書籍の魅力とともに、
中島光晴先生の「作品を展示して、書店の店頭でイベント」をすることで
書店の集客や、関連商品の売上を期待できることを力説しました。
すると、なんと紀伊國屋書店の新宿本店の常務さんを紹介していただけたのです。
紀伊國屋書店の常務さんは、僕の説明を熱心に聞いてくださったあと、
「分かった、やってみようじゃないか!まずは、『長崎店』でやってみなさい。
そしてそれが成功したら、『福岡店』だ。
そこでも成功できたら最後は『新宿本店』のイベントとして開催しよう!」
と言ってくださったのです。
全国無銭行脚で鍛えた中島光晴先生の、書に魂をこめた即興書道Liveは、
書店を訪れたお客様の心をつかみ大成功。
寸志にて「目の前のお客様の、好きな言葉を、魂をこめて書き上げる」という
「書魂Live」でお客様が集まってくださる。
「中島光晴先生の作品」が売れる、そして書籍「書魂」も売れる。
長崎でも福岡でも成功を収め、とうとう紀伊國屋新宿本店でのイベント開催にこぎつけました。
中島光晴先生にとっても、私たち「芸文堂」にとっても、
貴重な経験であり、名誉ある実績をつくることができました。
中島光晴先生は、この本「書魂」の出版のあと、
この旅で初めて訪れた富山県八尾で行われる「おわら風の盆」に17年間通い続けられ、
様々なイベントに招聘され、活躍のステージを拡げていかれました。
実は、今から2週間ほど前、中島光晴先生の奥様からお電話をいただきました。
それは、「伊豫屋を訪れたお客様が、出版に興味をもっておられたから、
中村さんを紹介しようと思って」と、連絡してくださったのでした。
そこで、中島光晴先生はお元気ですか?と尋ねたところ、
なんと、80歳で、風のように自由に、力いっぱい生きられたその生涯をとじられたと伺ったのです。
そこで、先日、妻と母とともに、久しぶりに伊万里のご自宅を訪ね、
ご仏前にお供えをし、感謝を込めてお参りしてきました。
そのとき、奥様から「書魂の本のおかげで、主人の人生は勢いづいたと思うわよ」と言っていただきました。
『本で勢いづいた!…最高の誉め言葉をありがとうございます。』
デジタル化におされて、出版業界は厳しいと言われていますが、
「本」が、その著者の「実績」となり、「ステータス」を高めて、
「次の活躍のステージ」に押し上げてくれる存在になる。
そんな事を、中島光晴先生に限らず、沢山経験してきました。
これからも、魂を込めて「本」を創る仕事に、励んでいきたい。
そして、著者が「本で勢いづいた」と言ってもらえるように、
熱意と愛情をもって取り組んでいきたいと思います。
PS.帰り際に、奥様から古伊万里酒造の銘酒「前(さき)」をお土産にいただきました。この「前」の文字も、中島光晴先生の「書」。
あらためて書魂を読み返しながら、味わいたいと思います。